日常のちょっとしたことを丁寧に生きていきたい、そう思わせてくれたシェフの所作とは?
先日、高級な鉄板焼きのお店で食事をする機会があった。個室のカウンター席で、カウンターを挟んだ向かい側は鉄板。すぐ目の前にシェフがいて、同席していた4人のために調理してくれるという特別感、料理の美味しさ、すべてが素晴らしく、忘れられない時間を過ごすことができた。
そんな中で一番印象に残ったのは、シェフがにんにくチップを作っていたところ。シェフのにんにくチップ作りは本当に丁寧で、見ていてうっとりしたのだ。
にんにくチップを作ったことのある人ならわかると思うが、にんにくは焦げやすい。丁寧にゆっくり作業をしなければいけないとわかっているのに、つい、さっさと作ろうとして火を強めたり、他の作業をしたりしてしまう。こうやって、にんにくから浮気していると、あっという間に「まっくろくろすけ」の出来上がり。焦げたにんにくチップは苦く、焦がすたびに後悔していた。
一方シェフは、にんにくチップ作りに全力投球。大量のスライスしたにんにくを1枚1枚重ならないように鉄板の上に並べていく。これだけでもかなりの時間がかかっていた。私なら並べている途中で発狂してしまいそうだ。
それに比べて私が作るにんにくチップは、もっともっと少ないのに、面倒なのでスライスしたにんにくをまな板からフライパンへと豪快に投入。重なっている部分がないようにかき混ぜてはみるものの、どうしてもムラができていた。
そしてシェフは低温で長時間かけて、にんにくを焼いていた。にんにくチップってこんなに気合を入れて作るものだっけ?と思わせるくらい、じっと、そしてひたすら待つ。待って、待って、そして待つ。「どう、そろそろ焼けた?」「うーん、もうちょっとかな?」まるでにんにくと会話をしているよう。私なら気が遠くなって途中で強火にしてしまいそうだ。
シェフがにらめっこしながら、気の遠くなるほどの時間をかけて作ったにんにくチップは想像以上の味だった。たかがにんにくチップ、されどにんにくチップ。適当につくれば残念な味、丁寧に作れば絶品になるのだ。
これは当たり前のことだけど重要なこと。家であそこまで気合をいれてにんにくチップを作るのは余裕がなければ難しいかもしれないけれど、それでも丁寧に料理をしていきたい。そう強く思った。料理だけでなく、生活の至る所で丁寧にできるなら、日常の些細なことがグレードアップするに違いない。適当にすればそれなりの結果、丁寧にすればワンランク上の生活が待っているのだ。