学生時代化学が苦手だった私が大人になった今面白いと思えるようになったわけ
昔から学ぶことは好きだった。大人になっても言語を学んだり、資格に挑戦したり、常に何かを吸収しようとしていたつもりだった。でもある日ふと思った。自分の網羅している分野はすごく偏っているのかもしれない。
苦手だった理系分野は学生時代から靄がかかったまま。全く接する機会がなくなった今となっては、暗黒の世界へまっしぐらだ。おまけに学生時代得意だった教科ですら、うろ覚えであることにショックを受けた。やっぱり意識的にいろんな分野にアンテナを張っていないといけないのだ。
そんなときにたまたま見つけたのが3時間でわかる化学。 薄くて軽くてカラフルで文字が少ないので、これなら久しぶりの化学でもハードルが低そうと思って読んでみた。
偉い先生ができるだけ易しく伝えようとしているのはわかったものの、久しぶりの化学の世界に少々てこずった。ただテストがあるわけではないので、わからないところは100パーセントわからなくても気にせず、ふんわりとイメージを掴んで先に進むことで楽しく最後まで読むことができた。
この本を読んでわかったのは、なぜ化学を学ぶ必要があるのかということ。学生時代は何故科学を学ぶのかピンときていなかった。めちゃくちゃ小さく肉眼では見えない原子をなぜ学ぶのか。マイナスとかプラスとか言われても実感がわかなかった。しかしこの本を読んで化学は日常生活と直結していることに気付いたのだ。
全ての物質は原子からできており、元素の性質を活用して身近なものが作られている。電池は激しく反応する性質を利用して作られているし、逆に反応しにくい性質、例えば吸い込んでも体に害を与えにくい性質を利用して作られたのが変声ガスや潜水用のボンベだ。確かに体内に取り込んで、変なものに変わったら困ってしまう。
金属が電気を通すのは、自由電子が動き回っているから。自由電子が移動するので、金属は叩かれると薄く伸びることができる。普段当たり前だと思っていたことに説明がついたのが面白かった。
ハイテク製品に不可欠なレアアース。なぜ必要なのかピンときていなかったが、(詳細はよくわからなかったけれど)原子の構造が変わっているおかげで独特な性質を持ち、それがハイテク製品を作るのに必要ということがわかった。
人体はこんなに複雑なのに、ほとんどを占めるのはたった6種類の元素。元素を学ぶと言うことは自分の体や健康を考えることだ。
触媒は遠い世界の実験室の中の出来事のように感じていたけれど、環境を守るために必要なものだった。例えば車の排気ガスに含まれる有害物質は触媒によって分解されてから排出されている。
化学は他にも身近なものを作り出した。ポリマーと呼ばれる鎖状の長い分子を生み出したことで生まれたのが、ビニールやペットボトル、ポリエステル、ナイロンなどだ。しかし自然界には人工の物質を分解する生物が存在しないため、長い間分解されずに残ってしまう。現在の環境問題につながっている。プラスチックが分解されないことは知っていたが、何故分解されないのかよくわかった気がする。
医学の分野でも化学は使われている。インフルエンザの薬タミフルなどは天然の木の実の分子を組み替えて作られたものだ。一から作られている新しい薬品もある。
このように化学は身近なものだ。肉眼では見えない小さな世界を研究し、その性質ごとに分類したことでいろいろ活用したり、世の中のいろいろな現象を説明することができた。
大人になって小学生のような感想で非常に恥ずかしいけれど、学生時代なぜ学ぶのか、学問が生活とどのように結びついているのか考えることができていたら、もっとしっかり学べていたのは間違いない。今回本を読んで少しだけ視界が明るくなった気がする。今からでも遅くない。いろいろ学ぼう。