なぜ私たちはダイエットに成功しないのか?
昔職場にダイエットオタクのお姉さまがいた。テレビでダイエットの特集があれば全て録画してチェックという徹底ぶり。ある日の夜、スーパーに行ったら、特売でもないのにある食材が棚から消えていたことがあった。普段そんなに人気のある商品でもないのにおかしいなと思い、お姉さまに確認したところ、テレビでダイエットに効くと紹介されていたとのこと。もちろんお姉さまはスーパーを三軒回り、ちゃっかりゲットしていた。
そんなダイエット大好きお姉さま、さぞかしスリムなのかと思いきや、どちらかというとぽっちゃり体型。万年ダイエッターなのだ。話題の食材やエクササイズは全てトライ。職場に持ってくるお弁当箱はこぶしサイズの小さいもの。「そんなに少なくてお腹すきませんか」と聞くと、「大丈夫ですよ」と言いながらお目々はうるうる。一瞬で食べ終わってしまうので、一緒に食べると、彼女の(いいなあ、美味しそうだな)というオーラが伝わってきて胸がいたんだ。
そこまで涙ぐましい努力をしているのに、何故彼女はぽっちゃりしているのか?その答えはお昼休みが終わるとすぐにわかる。
お腹が空いて空いてたまらないお姉さまは、お昼休みが終わってしばらくするとお菓子に手を伸ばすと、周りの人に配り始めるのだ。彼女曰く、同僚に配ったお菓子の一部を食べるだけ、お昼ごはんを我慢したので少し食べるのは問題ないらしい。けれど、お菓子はなかなかの量に見える。誰もツッコまないけれど、お昼を普通に食べて、お菓子を減らせば痩せるのでは、と思っているはずだ。
世の中には信じられない種類の、これを食べれば痩せる、ラクして痩せる的なハウツーに溢れている。でも結局、どんなに痩せる食材を摂っていても、痩せるエクササイズをしていても、それだけで痩せることはない。何事もバランスが大切なのだ。
彼女は今もぽっちゃりしている。相変わらず、最新のダイエットの知識はバッチリだ。痩せたいという願い、でも食べたいという矛盾、お姉さまは私達の欲望そのものだ。そんな彼女の姿はちょっぴり哀しくて、なんだかとても愛おしい。それは誰もが持っている、弱い部分だからかもしれない。