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え?予約ないの?宿無しの私がスペインで見ず知らずの人に泊めてもらった!

 
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のぶのぶ
世界30数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

情熱の国、スペイン。誰でも芸術家にしてくれそうな鮮やかな日差し、どこをとってもポストカードになりそうなおしゃれな街並み、おいしいご飯。そして子どもの頃、私が憧れたガウディの世界がある国。そんな素晴らしい体験の中でひときわ印象に残っているのがグラナダだ。

当時フランスに留学していた私は、休みを見つけてはいろんなところに出かけていた。せっかくだからフランスの近隣国は制覇したい、そう思っていた矢先にやって来たのが、ヨーロッパの大型連休だ。日数が確保できるのでスペインを一周しよう。フランスから列車でバルセロナに入り、南のグラナダまで下り、そこからマドリードへ抜ける王道コースだ。これなら、ずっと行きたかったサグラダファミリアもグエル公園もアルハンブラ宮殿もトレドも全部行ける!

そうと決まったら旅の手配開始。スペインへ向かう列車、地方へ行く長距離バスや列車、各地のホテルなどを予約していく。旅はもちろん始まってからも楽しいけれど、準備しているときからワクワクが始まっている。何を見よう、何を食べよう、何を買おう。時刻表とにらめっこしたり、地図に印をつけたり、行くと決めたときから旅は始まっているのだ。

そんなワクワクモードの私にアクシデントが発生した。順調に手配を進め、残るはグラナダのホテルを予約するのみだったのだが、なんとホテルがどこも空いていないのだ。ヨーロッパのゴールデンウイークのような大型連休に加えてグラナダでお祭りがあるためか、スペイン旅行を計画したときには既にホテルは満室になっていた。

これはまずい。

こうなったら最終手段、というわけで、ネット予約をやっていない小さなホテルに直接、片っ端から電話をかけてみることにした。それでも答えはみんな、満室のひとこと。

これはまずい。ルートを変えてグラナダを諦めるべきか。いやいや、アルハンブラ宮殿には絶対に行きたい。そう、アルハンブラ宮殿は譲れない。

そんなわけで諦めがつかない私は、その後もホテルに電話をかけまくり、ついに空いているホテルが見つかった。電話で予約を済ませて一安心、のはずだったが、この予約が後でとんでもないことになるとは、このときは知る由もなかった。

そして、いよいよ待ちに待った旅行の始まり。車窓からの風景を楽しみながら、陸路でスペインへと向かう。

ヨーロッパを旅する度に思うけれど、国境の通過が本当に簡単だなあと思う。日本の場合だと国境を越えるのは一大イベント感があるけれど、EU圏内では国境のチェックすらないので、国境をまたいだことすら気が付かないことも多い。日本で県を移動したときと感覚が変わらないのだ。おまけに通貨もユーロで変わらないと、ますます国をまたいだ実感がわかない。しばらく進むうちに見えてくる言語が変わって、なんとなく違う国に来たことに気付くのだ。

そんなわけでフランスからスペインに移動したことに気付いたのは音楽をノリノリで鳴らしたラジカセを抱えた若者の集団が列車に乗ってきたときだった。

よし、ついに憧れのスペインに来た!

バルセロナでガウディを満喫し、夜行バスでグラナダへ。隣に座ったお兄さんはいい人で、私がバスの運転手さんが説明したトイレ休憩の時間が聞き取れないと、そのたびに教えてくれた。残念ながらお兄さんは英語を話さなかったので、ほとんどそれ以外の会話は成立しなかったけど。それでも気にかけてくれたようで、私がバスを降りるときには鞄の中に入っていたCDをプレゼントしてくれた。あれから二十年近く経つけれど、いまだにドライブのお供として大活躍している。

そして、ついにグラナダに到着。スペイン南部のイスラム文化が色濃く残るエキゾチックな街だ。

早く観光したい気持ちを抑えてひとまずホテルへと向かう。そこでアクシデントが発生した。フロントでチェックインしようとしたところ、なんと予約が入っていないというのだ。

いやいや、そんなバカな。確かに電話で予約をしたんだから。

電話で予約した。

予約はない。

予約した。

予約はない。

ホテルとの押し問答が始まった。もし本当に予約できていなかったらどうしよう。大型連休にお祭りが重なっている、今のこの時期に他に空いているホテルなんてあるわけない。あったとしても、私には手の届かないような超高級ホテルくらいだ。このホテルに泊まれなかったら、超高級ホテルか野宿。さすがに治安が決していいとはいえないスペインで野宿は勘弁願いたい。こっちも必死だ。確かに電話で予約したんだってば!

しばらく押し問答が続いた後、ホテル側から提案があった。

あなたのことを泊めてあげたいけれど、満室で空いている部屋はない。代わりに従業員の家に泊まるのはどうかな?

従業員の家へのお泊り?ちょっとドキドキする展開ではあるけれど野宿することを考えたら、ありがたい。是非従業員の家に泊めてほしい旨を伝える。

君のことを泊めてもいいという従業員が二人いるんだ。一人目はあそこの彼。彼は恋人と二人でアパートに住んでいる。二人目はこちらの彼。彼はファミリーで一軒家に住んでいる。どちらでも好きな家を選んでいいよ。でも泊まるならファミリーの方がいいんじゃないかな?

確かにカップルの家は微妙だし、何より髭もじゃの彼は強面でがっちりしていて、ちょっと怖そうだった。それに比べてファミリーの男性は線が細くて取っ付き易そう。そんなわけで、ファミリーのお家にお世話になることにした。

おうちにいたのは、ホテルで働いている男性、奥さん、おばあちゃん、そして謎の男性二人(おそらく旦那さんか奥さんの兄弟だと思われる)、それから小さなワンちゃん。

ホテルで働いている男性は頭が少し寂しくなっていたけれど、奥さんが思っていたよりもとても若くて驚いた。真っ白なピチピチパンツから真っ黒なTバックが透けていて、若さ全開。それでも陽気なキャラクターと健康的な雰囲気でいやらしさは全くなかった。彼女は英語を話さなかったけれど、満面の笑顔と豊かなボディーランゲージで、お風呂の使い方や家のことなどを一生懸命説明してくれた。年の差カップルだと思ったけれど、もしかしたら旦那さんも実は見た目よりもだいぶ若かったのかもしれない。

夕食はどうする?と男性。ブルゲーにする?それとも家で一緒に食べる?

ん?ブルゲーってなんだ?スペインの伝統料理のことかな?それとも…?

ブルゲーって何か尋ねると、え、君はブルゲーを知らないのか?と驚かれた。ブルゲーは、ほら、マクドナルドとかのやつだよ。

マクドナルドのブルゲー?

しばらく考えてわかったけれど、ブルゲーは多分バーガー、ハンバーガーのことだ。バーガーをスペイン語風に読むとブルゲーになりそう。

スペインでおうちに泊めてもらうのにハンバーガーはもったいない。せっかくなので一緒にご飯を食べさせてもらうことにした。

ここで男性がホテルに戻るとのこと。彼がいなくなると、英語がわかる人は誰もいなくなった。みんな一生懸命話しかけてくれるけど、私はスペイン語が全くわからない。でも家族団らん、不思議と気まずくないのだ。みんなで一緒にワンちゃんと遊んで、テレビでお祭りの中継を見て、普通に楽しい。

そうやってみんなで過ごしていると、台所にいるおばあちゃんから、こっちにおいでという合図。お肉のスープをかき混ぜながら一生懸命話しかけてくる。

指を一本立てながら、ウノ?

指を二本立てながら、ドス?

おばあちゃん、お肉を何個食べるか聞いているの?

結構ボリュームのあるお肉だったのでウノと答えると、おばあちゃんはえーっというリアクション。ドスと言いながらボディービルダーのようなマッチョポーズ、ウノと言いながらしょんぼりポーズを繰り返した。どうやら、たくさん食べないと元気にならないよと言っているようだ。

わかったよ、おばあちゃん。いっぱい食べて元気になるよ。

そんなわけで私も元気に、ドス!お肉を二ついただくことにした。あったかくて優しい、おふくろの味。

グラナダのファミリーと過ごしたのは、たったの一晩。今になって思えば、言葉も通じない中、見ず知らずの人の中で過ごすことになったのだから、もっと不安な気持ちになってもおかしくなかった。それでものんびりと穏やかな気持ちで過ごすことができたのは、ファミリーみんなの笑顔がとってもあったかかったから。突然お邪魔した、得体のしれない私のことを優しく受け入れてくれて、本当にありがとう。おかげで、スペインで一番のあったかい笑顔とご飯をいただけた。一宿一飯、一期一会に感謝。

おすすめの本です。是非読んでみてくださいね。
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世界30数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

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