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物忘れの激しい父と私が散歩に出かけたら?

 
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のぶのぶ
世界30数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

夫の父はいろんなことを忘れてしまう。今日は何日か尋ねると誰かの誕生日だと思っているし、会話したことを忘れているので、同じことを何度も聞いてしまう。

そんな父と天気が良かったので散歩に行くことにした。行先を考えていると、今日が選挙の投票日だということを思い出した。投票に行ったか聞くと、今日が投票日ということも忘れていた。やっとのことでハガキを探し出したら準備完了だ。

足元がおぼつかない父に杖を渡す。こんなものはおじいさんが持つもの、と強い拒否反応を示していたが、「お父さんが使っているところ見てみたい」と言うと「ほう、そうか」とすんなり出かけてくれた。つくづく嫁に甘い父だ。

「私は投票所の場所がわからないけど、お父さんわかる?」と聞くと、彼は自信満々に、わかると答えた。
「何十年も投票してるのに、わからいでか」
そして、裏道を教えてあげる、とご機嫌に歩き始めた。

歩きながらも彼が気にしているのは杖のこと。こんなのを使っていたら、おじいさんだと思われるのではないか。あの人杖なんか持って恥ずかしいと思われているのではないか。ぶつぶつずっと文句を言っている。

「おじいさんだと思われるかもって、お父さんはおじいさんだから大丈夫だよ」と言うと
「ほう、そうか」と納得してくれた。

その後は、「杖を使うと背筋が伸びて、お父さんかっこいいね」とほめまくる。最初は「ほう、そんなもんか?」と言っていた父だが、何度も褒めるうちに「ほう、そうか」と文句を言わなくなってきた。

そうやって歩いていると大きな道に突き当たった。どっちに進むか確認すると、渡るとのこと。道を渡って少し歩くと父が「どっちに行くんじゃったかのう」と言い出した。まあ、想定の範囲内だ。少し悩んでから家に帰ればいいかなと思っていたら、前からおばあさんが歩いてきた。あの人なら投票所の場所がわかるかもしれない。

おばあさんに尋ねると、ありがたいことに投票所まで連れて行ってくれるという。そしてすぐにUターン。先ほど父が自信満々に渡った大きな道は、渡る必要はなかったのだ。少し凹む父。まあ、そんなこともあるよ。

おばあさんと歩く私たちだったが、すぐにおばあさんを追いかける私たちになった。父の速度が異様に遅かったのだ。

「あのおばあさん、歩くの早いのう」決死の形相で追いかける父。さっきまで杖に文句を言っていたのに、今は命綱とばかりにしっかり握りしめ、追いつこうと必死だ。

実のところ、おばあさんの速度は全く早くない。どちらかというと遅いくらいだ。しかし父はそれよりもさらに遅い。もし息子がおばあさんと同じくらいの速度で歩いていたら、そんな速さで歩けるかと文句を言って、歩くのをやめていただろう。しかしおばあさんには置いていかれまいと食らいつく。父は他人の前ではいい格好がしたいのだ。

「杖を持ってきてよかったね」と言うと「そうじゃのう、杖があってよかったのう」
まあ、明日には杖のありがたさを忘れて、きっと嫌だとごねるのだろうけど。

やっとのことで投票所に到着。おばあさん、ありがとう。父は息も切れて、杖にしがみついて、まるで漫画の登場人物みたいだ。

無事に投票も済ませ、あとは家に帰るだけ。
「帰りはゆっくり帰ろうね」
「そうじゃのう」

「今日は冒険だったね」
「冒険じゃった」

「家に帰ったらアイス食べようか」
「アイスなんか、家にあったんじゃろうか」

「冷凍庫に入ってるよ」
「アイスなんか出してもらったことはない」

「お父さんの好きなアイス入ってたよ」
「ほう、そうか」

「今日は冒険だったね」
「冒険じゃった」

夜は、きっとぐっすり眠れたことだろう。

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世界30数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

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