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チーズのにおいは境界線を越えるか?

 
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のぶのぶ
世界30数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

学生の頃同級生と二人でルームシェアをしていたことがある。各自の部屋が一つずつ、共通のリビング、キッチン、お風呂の間取り。

二人ともきれい好きではなかったので、掃除は気が向いたときに(というか、あまり掃除の記憶がない)、調味料や食材は自分で購入したものを使い、各自で勝手に料理して食べることにしていた。台所には備え付けの小さな冷蔵庫があり、左右で分けて使っていた。小さな冷蔵庫だったが、こまめに買い物に行っていたので、左右の境界線で揉めることはなかった。あのときまでは。

ある日家に帰るとルームメイトが少し怒っていた。どうしたのかと聞くと、冷蔵庫だという。境界線は越えていないし、何だろうと思っていると、私の買ったチーズだというのだ。小さなチーズの何が問題なのか。お行儀よく座っているではないか。

彼女の不満はチーズのにおいだった。こんなに臭いものを冷蔵庫にいれないで。このにおいは境界線を越えて冷蔵庫中に充満しているじゃない。

ちょっと待って、どこが臭いの?確かにヤギのチーズは普通のチーズよりも香りが強いかもしれない。でも絶対に臭くなんてない。これはいい香りだ。

臭いから自分の部屋に置いて。
常温ではもたないから冷蔵庫に置くよ。

結局落ち着いたのは、こうだ。においが漏れないように厳重に封をすること。できるだけ早くこのチーズを食べきること。

あれから何十年。「臭い」チーズを買うたびに、あのときのことを思い出す。今では冷蔵庫には境界線もなく、入れ放題。夫は臭いと思っているのかわからないけれど、特に何も言わない。

「いい香り、おいしいよ」冷蔵庫にしまいながら、心の中でかつてのルームメイトに話しかける。

「どう?ヤギのチーズ、好きになった?」

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