オカンの「なんでも食べる」は本当か?
昔見たテレビで印象的な企画があった。おばあちゃんに嫌いな食べ物は何か聞くと「なんでも食べる」と答える、というのだ。実際に番組で検証したところ、どのおばあちゃんも判を押したように「なんでも食べる」と答えていた。
最初の何人かが「なんでも食べる」と答えていたときは面白いだけだったが、それが何人も何人も続くと、面白さを通り越して感心してしまった。おばあちゃんたちは戦争で食糧難を体験しているから、食べ物で好き嫌いがないのだろうという締めくくりで、ちょっとキュンとさせられた番組だった。
身近な人はどうなんだろうと気になって、夫の母にも聞いてみた。
「お母さんの嫌いな食べ物って何?」
すると期待を裏切らない「なんでも食べる」という答えが返って来た。
でもちょっと待って。お母さん結構好き嫌いがあったような。
「お母さん、嫌いな食べ物、全然ないの?」
「なんでも食べる」
「お母さん、パスタ好き?」
「あんなまずいもん」
「お母さん、パスタ嫌い?」
「なんちゃ、おいしいことない」
嫌いな食べ物は何と聞かれたら「なんでも食べる」と言うけれど、辛抱強く聞いていくと、嫌いなものはどんどん出てくる。それも「あれは嫌じゃ」と顔をしかめてはっきりと。そして食べたくないときは、ちゃんと残す。
でも嫌いな食べ物は何?と聞くと「なんでも食べる」と答える。その一方で「●●は好き?」と聞くと「嫌い」と言う。何でも食べると言っていたのはなんだったのか。嫌いだけど出されたら食べるということか。やっぱりオカンも人間だった。
テレビに出ていた「なんでも食べる」と答えたおばあちゃんたちにも、本当に嫌いなものはなかったのだろうか。何でも食べると答えるのは本心なのか、それともずっとそう答えるように教育されてきたのか。もし嫌いなものがあるのに自分の心を押し殺して「なんでも食べる」と答えているなら嫌いなものを堂々と答えられるようになってほしいなと思う。「●●は嫌いですが、出されたら食べます」たまにはそんな回答があってもいいはずだ。