もしポエムを箱単位でプレゼントすると言われたら？

2022/09/06

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世界３０数か国を旅してきた旅行好き。華奢でおとなしそうな見た目とは裏腹にリュックサック一つでぷらりと出かける行動派。東京のど真ん中から愛媛に移住。トライアスロンに挑戦したり自然を満喫しています。

私は数年前、東京から縁もゆかりもない愛媛へ一人でやって来た。愛媛に来てすぐ、こちらで知り合ったおじさまから提案があった。「最近仕事を頑張っているからポエムを一箱あげようか。もっと欲しければ二箱でも三箱でも遠慮しないで」

仕事のご褒美にポエム？もしかして、おじさまが書き溜めたポエムを段ボール箱に入れてプレゼントしてくれるっていうこと？しかも三箱って、今までにどれだけ詩を書いたんだろう？このおじさまがどんなポエムを書くのか興味はあるけど…でもやっぱりいらない！

お気持ちは嬉しいですが、と断ると「甘いものは嫌いだった？」とおじさま。甘いって、もしかしておじさまのポエムはメルヘンチックなものなのか？それなら尚更いらない。

「そうか残念、美味しいのに」

あれ、おじさまのポエムは美味しいのか？どういうこと？

よくよく確認すると、おじさまの言っていたポエムはおじさま作の詩ではなく、母恵夢（ぽえむ）と言う名のお菓子のことだった。愛媛では有名なお菓子で、子どもの頃から親しまれているものらしい。

「まさか私が、箱単位で詩をプレゼントすると思ったとはね」とおじさま大笑い。

そんな母恵夢の気になる味はというと…子どもから大人まで幅広く愛されてきた優しい味。お手頃価格で、おまけに期間限定の味がたくさんあるので、ちょっとした手土産にぴったりだ。

今でこそ我が家のお菓子の定番の1つになった母恵夢だが、見るたびにおじさまのポエムと勘違いしたことを思い出して笑ってしまう。私にも、愛媛で知らない人がいないであろう、あの有名な母恵夢を知らないときがあったのだ。そう思うと、知らない場所に一人でやって来たときのドキドキ感や心細かった気持ちを思い出す。そんな母恵夢が懐かしい味になった今、愛媛が第二の故郷になってきたのを感じる。こうやって人は新しい場所に溶け込んでいくのだ。