夫はケチなのか、モノを大切にしているのか、それとも…?
私の夫は同じものをずっと使いたがる。よく言えば物持ちがいい、悪く言えばケチだ。
親指に穴が開いた靴下を手放すのもごねる。「ちょっと親指が見えているだけ」「あとは全く問題ない」「誰も靴下なんて見ないから」
私も負けじと反論する。「それ、かなりみっともないよ。脱がないと思ったときに限って、お客さんの家に行ったりするんだから」そして最後は泣きの一手。「家に在庫はいっぱいあるんだから。破れたのをはいていたら、私が新しい靴下も履かせない意地悪な人に思われるでしょ」
しぶしぶ彼は靴下を脱ぐと、雑巾として使うことに同意する(ここでも決して捨てたがらないのだ)。
敷布団の交換も断固として拒否。買ったときには15センチはあったフカフカの敷布団も、今では笑ってしまうくらいのせんべい布団。背中の感触は固くて、もはや床しか感じない。
「背中痛くない?」と聞くと「少し痛いかなぁ?」と答える。それでも「新しいの買おうか?」と言うと「いらない、必要ない、これがいい」ときっぱり断る。
きっと薄いから寝心地はあまりよくない。でも寝られないわけではない。新しい布団を買うにはお金がかかるし、古い布団の処分代もかかる。それくらいなら、今の布団でいいじゃないか。きっとそんなことを考えているのだろう。
そんなケチな彼だが私には優しい。腰が痛くてうまく眠れないと言えば、お高いマットレスをプレゼントしてくれる。私が「マットレスで寝てみて。どう、気持ちいいでしょ?」と聞くと「気持ちいいね」とまんざらでもない感じ。すかさず「敷布団替える?」と聞くと、はっと我に返り「いらない、今のがいい」と答える。その表情がアニメのようにコミカルで笑ってしまう。
彼は単なるケチなのか、モノを大切にしたいのか、それとも私がおねだりをするから節約をしているのか、本当のところはわからない。それでも今日も彼は毛玉たっぷりの10年以上愛用しているシャツを手放さない。
「ちょっと肩に穴があいただけだから」