グルメとは程遠い高齢の父がグルメリポーターをしたらどうなるか妄想してみたら?
夫の父は大昔に胃の手術をしてから、あまりたくさんの量が食べられなくなった。そのせいかわからないが、たべることに対する興味が少ない気がする。お菓子をあげると、どれを食べても感想はいつも同じ。
「あんまり甘いものは好きではないけど、これは甘すぎないからいいのう」
あまり甘いものは好きではないと言いつつ毎回ぺろっと食べているので、本当に甘いものが苦手なのか疑わしい。
そういえばこんなこともあった。以前チョコサンドを渡したら、チョコレートの茶色を見てあんこだと勘違い。チョコレートだと伝えたものの、結局食べ終わった後もずっと「あんこはやっぱり、ええのう」と言っていた。もしかしたら羊羹だと言っても信じたかもしれない。
こんなこともあった。チーズが嫌いだと言っていたが普通にピザを食べていたので「お父さん、チーズ大丈夫なの?」と聞くと、「これはチーズかいな?」と驚いていた。人の味覚なんていい加減なものだ。
父の食に関するコメントで最高だったのは、何といってもポテトを食べたときのことだろう。何か普段食べないような珍しいものを食べてもらおうと、ハワイアンプレートを数種類テイクアウトした。油をしっかり使った料理だったので喜んで食べるか少し不安だったが、意外に好評。中でもお気に入りはポテト。他の料理そっちのけで、ずっと食べ続けていた。父がそんなにポテトが好きだったとは知らなかった。「お父さん、おいも好き?」と尋ねたときの、父の回答が最高だった。
「いもには骨がないからのう」
味ではなく、まさかの食べやすいからという回答に家族は大爆笑だった。
もしこんな父がグルメリポーターをしたらどうなるだろう、と夫と二人で妄想してみた。まずはチョコサンドをパクリ。
「おいしいです。あんまり甘いものは好きではないですが、これは甘すぎないからいいですね。あんこがおいしいです」
「これ、あんこではなくてチョコレートなんです」
「ああ、そうですか。やっぱりあんこはいいですね」
次はケーキをパクリ。
「おいしいです。あんまり甘いものは好きではないですが、これは甘すぎないからいいですね」
「何味ですか?」
「これは…これは…?わしは何を食べてるんじゃろうな?」
次はポテトをパクリ。
「おいしいです。やっぱり骨がないのはええのう」
他の料理が出てくるも、父の胃袋はここでマックス。
「すんませんのう。お腹いっぱいじゃ」
こんなグルメリポーターはすぐにクビになってしまうだろう。でも1度くらい、こんなグルメ番組を見てみたい気もする。口に入れる前から「うまい」を連呼している番組よりは、意外におもしろい、かもしれない。