父にあげるバレンタイン
バレンタインにお菓子を作るのが学生時代からのルーティンだ。そもそもバレンタイン以外にお菓子を作ることは、ほぼないと言ってもいい。普段なら面倒でやらないことも、イベントだからやってみるかと思えば重い腰もあがるのだ。
とはいえ不器用な私。お菓子作りの失敗は数知れない。材料もラッピングも揃ったキットを使い、溶かして固めるだけの簡単なレシピにもかかわらず、できたチョコレートがなぜか付属の箱に入らない。ハートの形をしたケーキが真っ二つに割れた。生地をうまく絞れず、マカロンがスライムのような形になった(おまけに生焼け)。レアチーズケーキに入れたゼラチンが溶けずに固まり、グミケーキになった。今年こそはうまくいったと思ったけれど、ビスケットを砕いて作った土台がうまく固まっておらず、文字通りビスケットの粉になってしまった。
実家にいたときは台所を占拠しては、家族を巻き込んで大挌闘。当時付き合っていた大好きな彼に渡すために必死だった。
そんなわけで、父のチョコレートは二の次。母に「お父さん、楽しみにしてるんだからあげなさい」と言われて、慌てて彼に渡せない失敗作を父にあげていた。父は私の作った下手くそなお菓子を本当に喜び、毎回
「お父さんが本命やろ?お父さんに作った余りを彼にわけてあげてるんやろ?」
と確認していた。本当は逆なのだけど、「はいはい、お父さんが本命ですよ」と言っておく。
さすがに結婚してからは、「お父さんが本命やろ?」とは言わなくなったけれど、やっぱり娘からのチョコレートが嬉しいのは変わらないようだ。昔は、父には彼氏の余りをあげていたバレンタイン。今では父専用をあげている。